ひかりかがよう

20世紀の終わりから21世紀の初めの若者たちのことばです!

祖父母とお医者さん  2006

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*   祖父母とお医者さん                J・I

 

 私の心に残る人は、小学生の頃に亡くなった祖母と祖父と一人のお医者さんです。

 

 私の祖母は、肺の病気で私が幼い時から入院していました。なので一緒に遊んだ記憶がありません。でも祖母は、私のことを大事に思っていました。祖母の写真に、赤ちゃんの私を笑顔でだっこしている姿が何枚かあります。それを見たらわかるし、何より実感したのは、祖母が亡くなる時でした。

 

 亡くなったのは私の誕生日の次の日でした。祖母は私に、誕生日プレゼントのくまのぬいぐるみと一通の手紙を残してくれました。祖母はどんな気持ちでその日まで頑張ってくれたんでしょう。私は幼いながらも祖母の頑張りと優しさがとても嬉しかったです。その反面とてもとても悲しくて、大声をあげ泣きました。

 

 心に残る二人目のお医者さんは、名前も知らない、たった一度会っただけのお医者さんでした。まだ祖母が入院している頃、病院から連絡がありました。母がすぐ病院に向かうことになり、私は何か、母に置いていかれる感じがして、わがままを言い、一緒に病院に行きました。でも小さい子供は入れない病室だったので、外で一人で待っている時に、一人のお医者さんが絵を描いたりして遊んでくれました。それは不安でいっぱいだった私の気持ちを、安心の色に変えてくれました。小さい出会いかもしれないけれど、私にとっては大きな出会いでした。

 

 最後に祖父とのふれあいです。祖父はとても優しい人でした。いつもにこにこ顔で、嫌な顔一つせず私と遊んでくれたし、わがままでも聞いてくれました。祖父もまた入退院を繰り返していました。それでも私に、辛そうな顔を見せたことは一度もありませんでした。祖母が入院していた時も、病室に入れない私の相手をして一緒に待ってくれました。誰よりも祖母の隣にいたかっただろうと思うと、少し罪悪感みたいなものを感じます。でも祖父母の愛情、お医者さんの優しさとの出会いは、私の生きていく中で一生涯忘れることはできないと思います。                       [2006年6月?]

 

 

★ 生涯ずっと祖父母の思いを抱えながら、私たちは生きていくのだと思われます。本人が目の前のことで精一杯になっていたとしても、祖父母や家族の思いは私たちのそばにある。私たちは一人ではなくて、たくさんの思いに包まれている。

 

 それをムチャクチャにしてはならないし、そうした思いを暴力でふみにじる人は、思いも人生も何もかもふみにじっている。そういうことはさせない私たちでありたいのですけれど……。