ひかりかがよう

20世紀の終わりから21世紀の初めの若者たちのことばです!

高速道路はやって来る!

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*   小学生のとき悔しかった事             H・K

 僕がまだ小学生で、毎日、日が沈むまで、泥まみれになるまで遊んでいた日のことです。いつものように遊び疲れて家に帰ると、両親が話をしていました。僕はいつもと違う雰囲気にも気づかずに話に加わりました。

 

 話の内容は、家の近くの山や谷を崩して、高速道路が作られるという話でした。今でも、その話を聞いた時のショックの大きさはしっかりと覚えています。でも、その頃の僕は考え方が甘く、近所の人達が反対してくれて、高速道路なんてできるわけがないと思っていました。しかし、高速道路の建設は進んでいきました。

 

 その時、偶然にも小学校の授業として、町の議員の人に、自分の言いたいことや聞きたいことを発表する機会がありました。僕は今しかないと思い、高速道路の建設について、自分のできるかぎりの考えを、勇気を出して発表しました。

 

 その意見に関して議員の人が出した答えは、僕にとって全く納得できるものではありませんでした。その時は、自分の一生懸命さが相手に伝わってないような気がして、すごく悔しかったのを覚えています。

 

 そして今、僕の家の前には高速道路が開通しています。過ぎ去った事はどうしようもありませんが、今でも昔の大好きだった山や谷、毎日のように遊んでいた自然は、昔の面影を残さずに、僕にとっては、うるさいだけの人工の山になってしまいました。

 

 今は慣れてしまって、あまり嫌とは思わなくなりました。でも、昔の写真を見ると、自分にとって大切な場所がなくなった事を実感して、悲しくなります。

 

 だから、この犠牲を人の役に立てるために、(みんなに?)考えていってほしいです。   [2006年5月ころ]

 

★ 高速道路、大規模工場、大規模施設、巨大基地などいろんなものが国家プロジェクトとしてやってきます。そういう時、地元では反対の声が上がったりします。

 

 でも、たいていはかき消されて、粛々と巨大プロジェクトは完成されていきます。すべては経済に呑み込まれ、個々の思い入れなど何の役にも立たなくなります。

 

 ああ、どうしたらいいのかな。経済は大事です。それがなくては生きてはいけない。でも、そればかりでは、そこに住む人々の思いは蹴散らされるばかりです。そんなのはつまらな記憶だから、踏みつぶされても仕方がないのだろうか。いや、その記憶をみんなが共有できたら、巨大プロジェクトも足踏みすると思うのだけれど……。