ひかりかがよう

20世紀の終わりから21世紀の初めの若者たちのことばです!

腹が立ったこと  A・Iさん

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*   「腹が立ったこと」 A・I

 

 テレビの中で、最近人気の芸人二人が苦痛の表情で、マグロを食べている。マグロ丸一匹を数日間で食べきるという企画らしい。そのマグロはとても大きく、値段もだいぶと高そうだった。
 

 二人も初めのうちはそのおいしさに感動して「うめー、うめー」と言いながらパクパク食べていた。しかし、あまりの量の多さとマグロの脂にやられ、だんだんと箸がすすまなくなる。でも番組の企画だから食べ続けなければならない。二人は「気持ち悪ぃー、もー食べたくない」と言いながら、無理矢理マグロを胃に流し込んでいる。

 じゃあ、もう食べるなよ。私の怒りはピークに達していた。この番組はどうかしている。いくら仕事とはいえ、この企画を受けた芸人たちもどうかしてる。世の中には食べたくても食べられない人たちもいるのに、その人たちがこの番組を見たらどう思うだろうか。
 

 私はすぐに番組ホームページの掲示板にアクセスした。この意見を書き込もうと思ったのだ。こんな企画、苦情殺到に決まってる。そしてみんなの書き込みを見て驚いた。「おもしろい♪ 頑張って!!」「今度は牛1頭でやってみたらどうですか?」
 ああ、日本人は生活が豊かになりすぎて、とうとう食べ物が遊び道具になってしまったのか。本当にショックだった。
 これではいけないと思い、私は自分の意見を書き込んだ。しかし、それがホームページ上に掲載されることはなかった。都合の悪い意見は消されてしまうらしい。
 

 飲食店でたまに見かける“珍メニュー”も、おいしくないとわかりきっているのに注文する人がいる。こんなものを作る側もどうかと思うが、注文した人は責任をもって最後まで食べるべきだと思う。
 食べられることは決して当たり前ではない。食べ物への感謝や食べられることの幸せを、もっとよく噛みしめてほしい。     [2007年6月]

 

★ みごと日本福祉大学の高校生福祉文化賞エッセイコンテストの優秀賞!
  向こうの先生からこんなコメントをいただきました!

 

 最近のテレビ番組を見て、食べ物を遊び道具にすることに怒りを感じる筆者の気持ちに、私たちも共感します。文章もイキイキしており、若い人の言葉で怒りが伝わってきます。「珍メニュー」というのがどんなものなのかわからないので、具体的に書いて欲しかったです。

 

★ それから、14年の歳月が過ぎてしまいました。今は2021年の2月。彼女はもう31歳なんでしょう。立派な大人です。どんな風になっているのか、しっかり者になっているんだろうな。私みたいなチャランポランなオッサンは許してくれないかも。そうですね。せいぜい私もずっと何か考え、行動していかなくてはならないですね。