ひかりかがよう

20世紀の終わりから21世紀の初めの若者たちのことばです!

二年連続の俳句甲子園(2001年8月)

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* 二年連続の俳句甲子園(2001年8月)

 

 県予選は三チームだけ。その中から二チームが松山へ行けるということなので、エントリーした時点で出場はほぼ決定していました。どうにか県予選を勝ち上がり、本大会に出場することになりました。

 

 そして、私たちは8月17日金曜日16時40分、松山市の野外研修センターに到着します。標高の高いところで、何やら高原の風のような、やさしい風が吹いていました(今もあの時の風が思い出されます)。

 

 前回は、高校生同士の交流の時間がほとんどなく、そこが大いに不満でした。たぶん主催者も余裕もお金もスタッフも足らなかったのでしょう。

 でも、今回は着いたその時から、あちらこちらで高校生たちが話をしていたり、走っていたり、汗をかいてたりしていて、「あっ、違うな」と感じました。

 初日の夜に、開催行事・チーム紹介・ゲームなどが行われ、翌日の本大会への雰囲気は盛り上がっていきます。

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 青森から熊本までの二十四チーム。准看護婦をしながら定時制高校に通っている子、大きなリボンがついてる夏服を着た千葉の子たち、文芸部でコツコツやってるよと言わんばかりの集団、T大進学者数を誇る男子高生、昨年準優勝の地元高校、甲子園でおなじみの香川の高校などさまざまで、この若者たちが明日からどのような大会にしてくれるのか、見ている大人たちも楽しみになりました。


 8月18日、松山市の繁華街の会場での一次リーグ。

 ワールドカップのようにリーグ一位になったところがトーナメントを上がっていく形(前回はトーナメントのみでした。一回負けたら終わりなのです)で、うちはAリーグ。東京のK成高校、千葉のM原高校、地元のH条高校の組でした。

 

 第一試合は、対開成。
  うち・雨止んで泉奏(かな)でる水の歌(あゆみさん)

               ……水の音が聞こえてくるような一句。
     K成・泉くむ幼き少女の白いそで(M田康一郎くん)……少し作りすぎ?

 さて結果は? 懸命に自分たちの気持ちや勉強してきたことを述べて一本先取。

 

 次は取られて、つづく三本目は、
  うち・雲切れて泉におちる月のふね(りえさん)……表現がシャープ!
     K成・透きとおる泉と君に降る光(I嵐弘樹くん)……光源が不明で少し変?  

 これも二対一で取る。あと一つ取れば一勝というところで、つづけて二本取られ逆転を許します。惜しかった。これで勝っていれば歴史は変わっていたのに……。


 第二試合、千葉のM原高校との対戦も二本取って、あと一つ勝てば勝利というところで、後半に逆転されてしまいます。これで二敗。

 

 一次リーグでの敗退が決まるが、三試合めのH条高校戦は全勝します。


 この日の夕方、谷川俊太郎(たにかわしゅんたろう)さんという詩人と、その息子さんでピアニストの賢作(けんさく)さんのコンサートに参加。国語の教科書にも出てくる詩人を生で見ることができて、こりゃ幸せだなと思っていると、宿舎に帰るバスの中で、敗者復活をかけてコンサートをテーマに一句作りなさいと言われ、何とか提出に間に合わせ翌日の復活にかけることにします。


 8月19日、先ず敗者復活戦。うちは「睡魔(すいま)来て詩もそこそこに夏の夢」(雅文くん)で舞台に登場。観客・審判から笑いを取り、「オッ、受けた!」と期待したものの、復活できず。

 

 結局「舞台からこぼれる言葉星月夜(ほしづきよ)」のH方高校が復活し、うちは個人賞待ちになります。

 

 大会は準決勝・決勝があって、「起立礼着席 青葉風(あおばかぜ)過ぎた」ほかの句で個人部門でも最優秀賞を獲得した神野紗希(こうの さき)さんの松山東高校が優勝する。

 

 昨年の大会でもキビキビとした言葉・態度で、神野さんはすごい若者だなと思ったものでしたが、一年の間に若々しい感性と、大人としての視界の広さと、後輩を思いやる気持ちを自然に出せていて、ものすごく成長したなぁと、他校生ながら大いに感心しました(やがて彼女は俳人として大成していきます)。


 そして、うちは優秀賞(全体で五人だけ)に「ふるさとの月万緑を眠らせる」で雅文くん。入選(全員で十名)に「青田波次の駅には君がいる」であゆみさんの二人が入り、地元に帰ると新聞などに二人の名前が載ったりしたものでした。

 

 さて、うちのチームをここまで引っ張ったのは、連続出場の由布子さんでした。彼女の「夏帽(なつぼう)の傾いている野菜畑(やさいばた)」の句には、自己の生活から詩を生み出そうとする意気込みがありました。

 

 あともう1人、いつもメンバーに気を配る雄大くんは「友人がながめていたる蛇の殻(から)」などで、日常から隠れているもののこわさを取り上げてくれていたのでした。

 

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