「故郷」 その3
◇ 故郷って、どこ? ここ? あゆみ
故郷という言葉を聞くと、なぜか田舎や、野原を想像してしまう。
私には、故郷といえば、今住んでいる所で、ずーっとそこに住んでいるから、故郷ってどんな風なのか、はっきりとは分からない。
長い間、どこか遠くにいて、たまに故郷へ帰って来ると、「なつかしいな」とか、「やっぱりここは、落ち着くなぁ」とか思うんだろう。
でも今なんて、たくさんのビルができたり、あちこちの道が舗装されている。こんな環境の、いろいろと変わっていく所に帰ってきて、なつかしいなんて思うのだろうか。
自分がいて、一番落ち着く所、気分が和む所が、故郷というあたたかい所じゃないかと思う。
私でいう故郷は、ここかもしれないし、違うかもしれない。いつか社会へと出ていくけれど、つらいとき故郷へ行って落ち着ける、そんな場所があったらいいと思う。
◇ こきょう・ふるさと 加奈子
故郷を「こきょう」と読むか、「ふるさと」と読むか。同じ漢字なのに、二つの読み方があり、ニュアンスがちがう日本語です。
私は生まれてから故郷にずっといます。今もいるので、故郷というのも変な感じがするのだけれど、将来、といっても本当に近い未来、自分の故郷を離れることがきっとあるでしょう。そんな時、私は自分が生まれ育った故郷をどういった目で見るのでしょう。
今はまだ、さっぱり分かりません。なにせ、高校も地元で、離れたと感じたことはないのです。故郷を離れて暮らしていると、ホームシックになる、とよく聞きます。私もそんな風になるのでしょうか。考えれば考えるほど不安になってしまいます。でもどこかで楽しみにしているのではないでしょうか。故郷を離れ、社会へ出てゆく自分を……。
私は、生まれた時からずっと一緒の故郷を「ふるさと」と読みたいと思います。近い未来、そう呼ぶことがあるでしょう。
★ 1996年の4月、一年生のみなさんは、こんなふうに「故郷」というのを語っていました。いま、アラフォーで、みんな「故郷」どう見てますか?
私は、もうこだわりはそんなになくて、とにかく、誰か気持ちの通じ合う人たちがいたら、それでいいやと思うようになりました。
できれば、家族もみんなそばにいたらいいんだけど、みんなそれぞれ仕事があるから、簡単には集まれないですね。でもいいです。気持ちを通じるようにします。とにかく今はこういう時ですから、腹ぺこでもいいから、心の通じる仲間がいて欲しいな。