十一年前の秋空 2008の1の1の俳句
◆ 2008.10.21 1-1秋の俳句 こんなことをしてみたんですね。生徒の皆さんは、忘れているかもしれない。秋をテーマに五七五を作ったなんて!
1 空高く青くきれいな秋の空
バレー部の彼女が作ったのは、正直で飾らない作品でした。
2 秋の空くも一つない快晴だ
まじめさがそのまま出ていて、秋空とはこのようなものだと表現しました。
3 赤色のトンボ飛び交う秋の空
これは残念な句になりました。季語が重ならないように作ってねと注意すればよかったんですけど……。
4 思い出すゆうとと見てた秋の空
サッカー部のこうだい君の作品でした。ゆうとって、誰なんだろう。
5 秋の空やさしい紅の帰り道
秋の夕暮れをついつい説明したくなるんです。くれない色だと表現したくなる。私は何だかなと思うんだけど、クラスの子に支持されて8点入りました。
6 空燃える空一つない秋の空
たくさん並んでくると、みんな気づいてくれると思うんですけど、秋の空は爽やかで、キレイで、澄んでいて、夕焼けはステキで、それをそのまま五七五にしても、表現したいのは分かるんだけど、それがどうしたの? となってしまう。これを吹き飛ばす表現が必要なんですね。
7 秋の空あやしい月が泣いている
8 切なさに満ちあふれた秋の空
こちらは、少しだけ飛び越えています。秋の空に「あやしい月が泣いている」何か訳ありで、読む人をつかむ力がある。ただ、形式の上で季語が重なってたり、泣いている理由を分からせる仕掛けが必要です。となると、やはり上五の「秋の空」をやめて、理由になることばが欲しい。同じ作者の次の作品も中七が説明的なのかな。リズムも悪い。
9 木の間にて映えわたりたる秋の空
木の間に秋の空が映える、本人に見えている景色かもしれないけど、他者には伝わりにくいのです。月の光なのか、澄んだ青空なのか、どうして木の間を選んだのか、何か特別の場所なのか、たぶん、特別な空間だと思うんだけど、私には見えません。
10 手を伸ばす突き抜けそうな秋の空
女子バレー部の子の作品。感覚的な作品です。私の手が突き抜けてしまうのか、秋の空がどこまでも突き抜けていくのか、とにかくどこまでも高い空。そこに手を伸ばすのであれば、語順を変えるとかしたらいいのかな。空に関わろうとする姿勢はいいと思います。
11 お日さまが照れてほほ笑む秋の空
二人の人が特選にした作品です。子どもが描く絵のようで、私なんかは腰が引けてしまいます。こういうのを素直にスキと言える若さがいいですね。
12 秋の空広く高く澄み切った
サッカー部のマネージャーだった人の作品かな。わりとバッサリ言い切りました。取っ掛かりがないので、おもしろいと言えないんだけど、この姿勢、これも若さなのかもしれない。
13 秋の空特になんとも思わない
これは作者の感性・気分ですけど、これに特選にする人がいたわけで、やはり人というのは不思議というしかありません。このこだわりのなさ、思い切りは次へのステップにつながったのかな。
14 澄み渡る広き蒼天秋の空
「蒼天」を使うなんて、あなた阪神ファンですね。だったら、「秋の空」は要らないから、別の言葉を持ってきたらよかったのに!
15 秋の空私のテストは梅雨の空
テストに一喜一憂した生徒の皆さんから支持を得て8点になった作品です。3人の特選と2人の選でした。コントラストなんですけど、俳句業界では、「秋の空」が従になってはいけないと言うんです。申し訳ないです。
16 秋の空とどけよとどけあの青に
彼女はこんな作品を作っていた。今回の私の再発見でした。秋の空を「あの青」と呼んでみた。そこへ何かを届けたい気持ちを持っている。彼女の強い思いを10年ぶりに感じた俳句でした。
17 心地よい眠りを誘う秋の空
ノンちゃんはこんなゆるやかな作品を作る人だったんですね。シャープで切れ味鋭い人でしたけど、硬軟使い分けることのできるタフさを持っていた。その片鱗が知れる作品でした。今なら、どんな作品を作ってくれるかな。